レーザードローンで農業を活性化する方法

レーザードローンの製品(GreenValley International社:紹介ページ)

レーザードローン(3Dレーザースキャナーを搭載したドローン)による地形調査は今や定番となり、林業等にも生かされるようになってきている。その技術を、農業に取り入れようとする動きが活発化している。

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農業、と一言で言ってもその中に含まれる作業は多種多様だ。種まきはただ種を蒔くだけでなく、その前に、土を均し、石灰を撒き、堆肥を撒く等多くの手間が必要となる。その手助けとなるべく、レーザードローンを活用していこうというのだ。

レーザーによる肥料成分の分析や土中水分量計測は既に技術として確立されており、種まきの前、土壌分析の際にレーザードローンを使って3Dマップを作成し、苗を植える、或いは種をまく最適な時期を計画することが可能になる。また、種まき後にマッピングを行えば、灌漑や作物の生育に重要な役割を果たす土中の窒素量の管理に大きく役立つことになる。

種まき自体も、空中から(レーザー)ドローンによって種子と栄養剤を入れたカプセルを射出するという手法があり、現在、散布率は75%となり、コストは85%削減されるという予測が立てられている。

この空中からの種まきは、植樹の場で大きな力を発揮しており、100m/秒で地面に種を撃ち込み、土中に埋め込むことで種子の生存率を上げると共に、人間が行えば1日に800個を植えることが限界であるのに対し、この手法では同じ数を1時間で終えることが出来る。単純に4,000㎡の植樹が1時間半で完了する計算だ。

生育中に必要となる農薬散布に関しても、レーザーを使用した距離測定装置を使用し、地形に応じた最適の高度での飛行、障害物の回避が可能な為、地面までの距離を測定しながら、適切な量の農薬を自動調節して散布できる。これにより、無人ヘリコプター等を使用した散布と比較して、農薬の飛散量が減少し使用量自体を抑えコストカットに繋がり、また、散布に要する時間も大幅に短縮する。使用するレーザードローンによっては40,000㎡/時で散布可能な機体もあり、これは人間が行う場合の40~60倍に相当する。

農地当たりの収穫効率の向上に重要となる生育状況のモニタリングに関しても、従来は衛星画像を使うことが最適とされていたが、精度とコストの問題を無視することが出来なかったが、より低コストで高精度なデータ取得が行える。

植物の成長に必須となる水、灌漑においても、レーザーによる土中水分量計測を行うことで的確に補水が可能であり、且つ、農地全体のデータ取得が容易なので、灌漑施設の補修・メンテナンス箇所の把握も容易となる。

訓練すれば誰でもドローンを飛ばすことはできる。が、保険加入や国土交通省の許可、物件投下、危険物輸送許可等は必須となる。法的に飛ばす手続きは国土交通省、ドローンを飛行させる実技、農薬取締法、散布の安全講習は農林水産航空協会(民間)の管轄となっている。実際に行う際にはきちんとした手順を踏んで許可を取ってから実施することが重要だ。

日本国内の農業従事者人口は年々減少の一途を辿っており、5年毎に調査される農林業センサス(2015年発表)を見ても農業就労者数は209万人で20%の減少、平均年齢も66.3才と高齢化が著しい。年齢別では65才以上が64%を占め、39歳以下は7%に留まっている。15~29歳以下の執る者数は63.000人と5年前の調査から26.000人の減少となっている。

 図2

この傾向に対し、農業を法人化することで、重労働の軽減や収入の安定を図り、若者が就労しやすくなる環境を整備する試みが行われており、実際に農業法人の数及び大規模農業化は進んでおり、農業法人数は5年前より26%増の27.000、農家一戸当たりの耕作面積も16%増の2.5haとなり、少しずつ効果が表れていることが窺える。

重労働、休みが無い、収入が気候や天候に左右され不安定、等々、若者が農業を避ける理由はこういったところだろうか。技術発展により、農業にかかる労働の割合は確実に減少しつつある。農地の管理も格段に容易くなってきている。このまま技術革新を進め、それを広く宣伝することで、若者が農業に興味を持ち、将来の選択の一つに入れやすい環境を作っていく事も、苦境にある日本の農業を救う手段の一つになるのではないだろうか。

(参考)
*Gigazine
http://gigazine.net/news/20160725-drones-revolutionizing-agriculture/
http://gigazine.net/news/20151206-dji-agras-mg-1/

*日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H6T_X21C15A1PP8000/(図2)

*農林水産省
http://www.maff.go.jp/index.html

*CATALYST
http://ja.catalyst.red/articles/talk-ichikawa/

*http://dronemedia.jp/wp-content/uploads/agricultural-mapping-system-DJI.jpg(図1)

「執筆者:株式会社光響 緒方」