2017年6月、世界最小の宇宙船が地球の周回軌道上に乗ることに成功した。サイズは3.5cm×3.5cm。重さは4g。子供の掌にも乗ってしまう大きさしかないこの機体には、見かけによらず、通信装置もセンサーも、マイクロコントローラーにソーラーパネルまで搭載されている。
図1
『sprite』と名付けられたこの極小の宇宙船は、以前このおもしろレーザーニュースの「レーザーは遠い隣人に届くのか。ブレイクスルースターショット計画」でも取り上げた、スティーブン・ホーキング博士らが計画する「Breakthrough Starshot」計画に使われる宇宙船のプロトタイプだ。4.37光年の宇宙的に見れば極めて近くに在る隣人、アルファ・ケンタウリを訪問するこの計画は、帆を取りつけたマイクロチップよりも小さな機体が地上からのレーザー照射を受けて、光速の20%の速度、実に60,000km/時で目的地を目指す壮大なものだ。
地球出発からアルファ・ケンタウリ到達までは単純計算で約20年。技術的な課題をクリアし、地球を飛び立つまでの時間を加味すれば、まだまだ先の話になる。しかし、確実に実現に向かっていることは確かだ。
ここまでは、前回の記事でお伝えしているわけだが、この度、アルファケンタウリへ向かう超小型ロケットのプロトタイプが紹介され、その実験結果と性能が披露されたのだ。
今回試験的に打ち上げられた『sprite』の見せた結果は文句の無いもので、カリフォルニアとニューヨークにある地上局との通信に成功し、また、遥か上空通過する『sprite』の信号をアマチュア無線家たちがキャッチしている。
計画では、送り込んだ宇宙船をアルファ・ケンタウリを周回する惑星群を撮影可能な位置に定着させるという。4.37光年、41.3兆kmは果てしない距離に思える。しかし数十年後には、そこから送られてくる遠い隣人の姿を目にすることが出来るかもしれない。
宇宙船はアルファ・ケンタウリへの道を一歩進んだ。次は帆を取りつけての推進実験だろうか、それとも、レーザー照射装置開発だろうか。何にしろ、新しい情報が待ち遠しい限りだ。
参考
*Tech Crunch Japan
https://tctechcrunch2011.files.wordpress.com/2017/07/image001-1.png?w=300&h=213(図1)
*Tech Crunch
https://techcrunch.com/2017/07/26/smallest-spacecraft-ever-launched-make-it-to-low-earth-orbit/
「執筆者:株式会社光響 緒方」