人間が生きていくための必須事項、「衣食住」。この中で一番不可欠なのは、「食」だろう。素っ裸でも雨ざらしでも気候や環境次第でどうにかなる(かもしない)が、食べられなければ早々にアウトだ。この大事な「食」に関して、偽装が行われることがある。これを暴く為のシステム開発に関する記事を先日書かせて頂いたが、今回は偽装を困難にするだけでなく、よりクリーンで、よりコストダウンも出来る、という新しい印字方法についてだ。
従来、賞味/消費期限の印字には、ゴム印の数字を合わせて使うラベラーや、インクジェットプリンター等が多く使われてきたが、食品のパック等に使用すると水分や油分で剥がれる、滲む、消えるといった問題が起こっていたのと並行して、改竄が容易、という側面もあった。一方、レーザーによる印字も行われていたが、剥がれない、滲まない、消えないと問題部分は解決していたが、使用者にある程度の知識が無いと、密封パウチに穴が開き中身がもれる、フィルムに穴が開くという、別の問題も発生していた。
2015年に大日本印刷により開発された、食品の賞味期限などを表示するレーザー印字の視認性を高めた安価な包装材は、包材のフィルムとフィルムの間に塗布したインキにレーザーを照射すると、インキが白色から黒色に着色することで文字などが印字される、という仕組みだ。フィルムとフィルムの間に印字されるので、接触や水分、油分によって消えたり掠れたりせず、書き換えも出来ない為、改竄も防ぐことができる。2017年5月にはこれを改良して、より少ないレーザー照射ではっきり印字、加熱殺菌処理も可能なフィルム包材を売り出している。
このフィルムの特長は、前述したように、消えない、掠れない、書き換えられない、に加えて従来品よりもくっきりと太く見やすい印字が可能になったこと、レーザー照射量が減少したので、包材へのダメージが軽減されたことが挙げられている。コスト面でも、インキのコストダウンにより包材15万点当たりの1点の価格は1/5以下に低下。インク、リボン等が必要無い為、印字コストはトータルで抑制できる。また、印字カスや煙等も発生せず、環境にも優しい上に、121℃で30分の過熱処理でも印字が薄れることは無いという、食品衛生にも貢献する優れっぷりだ。食品や医療・医薬、日用品のパッケージ向けに生産・販売されており、大日本印刷は、2020年度に10億円の売上を目標にしている。
ちなみに、食品を買うと大概は表示されている消費期限・賞味期限。表示する/しないの分かれ目は非常に大ざっぱに言うと、生鮮食品なのか加工食品なのか、ということにある。(勿論例外はあるので注意は必要)。食品表示法によると、
- 生鮮食品…名称、原産地、(場合によっては内容量)
- 加工食品…名称、保存の方法、消費期限又は賞味期限、原材料名、添加物、内容量又は固形量及び内容総量、栄養成分の量及び熱量、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所、製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称等
となっている。つまりスーパーでカゴやダンボールに盛られている生の野菜や、対面販売の肉類・魚介類は生鮮食品なので表示は不要、パック詰めされると表示が必要、となるのだ。尚、カットされて袋詰めになった野菜は、中身が一種類なら生鮮、複数の種類なら加工品になるそうだ。なので、野菜炒めセットは加工品、ネギのみじん切りは生鮮食品ということになる。賞味/消費期限の世界も奥が深い。何にしろ、くっきり印字で安心消費、といって頂きたいところだ。たまには、食品偽装事件の話を聞かない年があっても良いじゃないか、と一消費者としては思ってしまうのだが、どうだろうか。
参考
*消費者庁 食品表示ガイド
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/jas_1606_all.pdf
*DNP 大日本印刷
http://www.dnp.co.jp/news/10135563_2482.html
http://www.dnp.co.jp/news/__icsFiles/artimage/2017/05/16/c003j_news09/201705190001.jpg (図1)
https://image.biccamera.com/img/00000003424676_A01.jpg?sr.dw=320&sr.jqh=60&sr.dh=320&sr.mat=1 (Top画像)
執筆者: 株式会社光響 緒方