陸海空軍全てでレーザー兵器の開発導入を進めているアメリカだが、この程海軍がロッキード・マーティン社のレーザー砲2基を、総額1億5000万ドル、日本円にして160億円で購入したことを発表した。1基は陸上試験用、もう一基は2020年にアーレイ・バーク級駆逐艦に搭載予定だ。
契約されたレーザー砲は射撃1回に150kwの電力を消費する。実際に使用すれば、無人航空機やボートを破壊可能な威力となる。後々300kwまで上げるという計画も立てられており、最終的にはミサイルや航空機の撃墜等も可能としていく方針のようだ。洋上発射実験で使用されたレーザー砲は30~50kw、米陸軍に納入予定とされるレーザー砲が60kwと言われているところから考えると、相当な威力となる。移動用に小型化が重要となる陸上兵器とは異なり、少々巨大なバッテリーでも積み込める艦船は、高威力のレーザー兵器搭載という面では有利なのかもしれない。もっとも、兵站を考えると弾薬や燃料輸送を軽減するレーザー兵器は、陸軍としても重要視せざるを得ないところだ。空軍でも、アパッチにレーザー兵器を搭載して実証実験を行い、実戦投入は近いのではないかとささやかれている。
レーザー兵器の導入を着実に推し進めている米軍だが、今回の契約は駆逐艦用レーザー兵器の入札開始から、1年と経たずに今回の契約を結んでいる。契約を急いだ理由として、長江の港にある中国軍艦のデッキにレールガンのプロトタイプに見える写真が出回った為ではないか、との話がある。増強を続ける中国軍へのけん制として強力なレーザー兵器の導入でプレッシャーを与えることが目的だ。
レーザー兵器の何よりの利点は、そのコストパフォーマンスの高さだ。『200ドルのドローンを300万ドルのミサイルで撃墜する』と揶揄されるように、戦争形態は大きく変化しつつある。既存兵器は勿論、開発中のレールガンも砲弾は必要不可欠だが、レーザー兵器はそうではない。一発撃つのにかかるコストは多くとも数百円だ。しかも、電力供給が途切れない限り、無限に撃ち続けられ、弾切れの心配は無く、大量の弾薬を輸送する必要もない。導入に力を入れるのは当然といったところだろう。一方で同時に進められているレールガンが難航している、という話もあり、より実現性の高いレーザー兵器にシフトしているのではないか、との見方もある。
米海軍とロッキードマーティン社の契約の段階で、既に8億ドルの追加オプションが盛り込まれ、この金額は艦隊駆逐艦の10%以上に搭載し、更に10基を購入できる金額になる。軍のレーザー兵器への期待が窺える。
参考
*MOTHERBOARD
https://motherboard.vice.com/en_us/article/neqvag/the-us-navy-bought-its-first-big-laser-cannon
*GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180214-us-navy-laser-cannon/
https://i.gzn.jp/img/2018/02/14/us-navy-laser-cannon/03_m.jpg (Top画像)
https://i.gzn.jp/img/2018/02/14/us-navy-laser-cannon/01_m.jpg (図2)
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2017/03/170321laser1-w960.jpg (図1)
執筆者:株式会社光響 緒方