ジーンズ新時代到来か。リーバイス、レーザーのダメージ加工技術導入。


世界中どこに行っても誰かが穿いているお馴染みのジーンズ。気軽に着られてしかも頑丈、値段もピンからキリまで、新品好きもビンテージ好きも、好みに合わせてあらゆる人が楽しめる定番アイテムだ。このジーンズ業界の大御所、誰もが知っているリーバイスがレーザー照射でジーンズの加工を行うシステム「Project FLX」を導入することを発表した。


*Introducing Levi Strauss & Co. Project F.L.X.

加工するジーンズを撮影して、ジーンズごとに出したい風合いをイラストのように画像処理。それにレーザーを照射して生地に焼き付ければ、あっという間にエイジング加工を施したジーンズの出来上がりだ。勿論、エイジング加工だけではなく、ロゴでもイラストでも陰影でも好きなデザインを何でも焼き付けて描くことができる。また、このシステムでは洗浄後に仕上加工を施すので、最終段階ギリギリでのデザイン変更も可能だ。繊維の層を剥がすレーザー加工技術により、必要とされた20の工程は僅か3工程にまで減り、人の手で一時間に2~3着程度しか加工できなかったものが、レーザーを使えば、一着わずか90秒で完成する。このシステムならば、既存の方法では長ければ数カ月はかかっていたジーンズのリードタイムを、数週間、数日にまで大幅短縮できる可能性がある他、限定的な顧客のニーズにこたえる少量生産や、小規模製造拠点を有効活用したハイパーローカル生産も可能にすると見られている。

更なる注目点は他にもある。
実は、多くの人が好むジーンズのエイジング加工には、多大な時間と労力と化学物質、大量の水、が必要とされてきた。加工工場周辺の環境への影響が問題視され、ジーンズメーカー各社が各々取り組んでいる課題の一つでもある。過去には、ジーンズに砂を吹き付けて色あせた風合いをだす「サンドブラスト製法」は粉塵によって珪肺症を引き起こすことから、多くのジーンズメーカーがこの工程を行う工場からのボイコットを表明したが、後にその工場から変わらず製品を仕入れている、と暴露され問題になった事もある。また、ジーンズの染色につかわれるインディゴは、発色は美しいが定着させるのが難しく色落ちの激しい染料だ。色落ちを防ぐために様々な化学薬品を使用することで、ジーンズのあの色は保たれてきた。染め上げたジーンズに使い込んだ風合いを出す為に何度も洗浄し、その為に使用される水の量も膨大だ。日本ではそれ程強く実感されないかもしれないが、先進国でも水不足に頭を悩ませる国は珍しくはない。勿論、この加工の際にも化学薬品は使用されている。環境問題と共に、節水もジーンズ業界の大きな課題の一つだ。

今回リーバイスが発表したレーザーによる加工システム『Project FLX』は、これらの問題解決の為に大いに力を発揮されると見られている。エイジング加工の為の水も、化学薬品も必要とはしない。「サスティナビリティ部門」を設け節水加工技術の開発によって10億リットルの節水に努めてきたリーバイスは、更にその量を減らし、現在ジーンズの仕上げに使われる数千種もの化学薬品は数十種類まで削減することができるだろう。2020年までに有害化学物質排出をゼロにするという目標を掲げるリーバイスにとって重要な技術というだけでなく、ジーンズ業界、繊維業界全体でも注目すべき技術と言えるだろう。

参考
*engadget
http://japanese.engadget.com/2018/03/05/project-flx/

*グノシー
https://gunosy.com/articles/RdAc4
https://contents.gunosy.com/2/28/822b4d7e9cc5b1b67c89b70e477d946a_content.jpg (Top画像)

*d.365
https://www.digimonostation.jp/0000133148/</!–NoAds–>

*HOUYHNHNM
http://www.houyhnhnm.jp/feature/61757/

執筆者:株式会社光響  緒方