最近ロボット業界が大いに賑わっている。ボストンダイナミクスのバク宙する「Atlas」、4足歩行で顔の無い犬に見えないこともない来年発売が決定されている「spot mini」。日本国内では「ペッパー君」に「ASIMO」に「AIBO」、と何かと話題になる機会が急激に増加中だ。そんな過熱気味なロボット界にまたしても新星が華々しく登場した。その名も『Stickman』。直訳すれば『棒人間』だ。落書業界の古参とも言うべき棒人間のロボット?!と思うかもしれないが、残念ながら違う。形状的には棒人間よりももっと「棒」だ。こんな風に。
手も足も頭も無い、所謂ところの『Stick』つまり棒だが2つの関節がある。カクカクした尺取虫のような姿をしている。直訳が棒人間なだけで固有名詞は『Stickman』。やはり我々が良く知る「棒人間」とは全くの別物のようだ。
ではこの『Stickman』はどういったロボットなのか、というところが問題だ。話題になるからにはなるだけの理由がある。先ずは動画で確かめるのが確実だろう。以下をご覧頂きたい。
*Stickman: Towards a Human Scale Acrobatic Robot
まるで棒型の猫のように鮮やかな空中回転だ。柔軟な関節を駆使しタ動きは見事としか言いようがない。この『Stickman』を開発したのはディズニーリサーチ。そう、あのディズニーだ。将来的にロボットに求められるだろう危機回避技術の研究の為に製作されたのだという。『Stickman』は3つの棒状のパーツを角度を調節できるようにダンパーで繋いだロボットだ。関節は2つ。人間の腰から下だと思えば良いかもしれない。身長は約2.1m。人間が直立して腕を上に伸ばした長さを想定しているそうだ。そして6mの高さの空中ブランコから絶妙のタイミングでフック(人ならば手に当たるのだろう)を離し、関節を柔軟に使って衝撃を最小限に美しく着地できるように設計されている。
『Stickman』が自在に回転し無事着地ができるように、彼には3つものレーザー距離計が装着されている。「Leading」「Center」「Trailing」の3つの距離計は、12.5度の角度で取り付けられており、地面との距離と共に自分が空中でどんな体勢になっているのかを把握することが出来るようになっている。
更に、彼にはジャイロシステム(慣性モーションセンサー)も装備していて、水平面との角度も把握できる優秀さを備えている。下の図4右下のグラフは縦軸で角度、横軸で時間を表示している。
また、右上のグラフでは3つのレーザー距離計がレーザーを地面に照射し、跳ね返ってくるまでの時間差で距離を計測し、自分の位置や角度を把握している様子が表視されている。これらを総合して、『Stickman』は見事な回転と空中姿勢、そして着地を実現させているのだ。勿論、着地の為の重要なロープを離すタイミングも、フックを外すことで彼自身が行っていることも忘れてはならない。ディズニーリサーチ社としては、単なるデモンストレーションやショー向けのロボットとし『Stickman』を開発しているわけではないそうで、将来的にロボットの活躍の場が広がった時に、高所から落下することや、災害現場等の障害物の多い場所での作業を想定して、衝撃を吸収することで破損/損壊を防ぐことができる技術の開発を進めておきたい、ということのようだ。
とは言え、開発はあのディズニーだ。そう遠くない将来、この『Stickman』の技術を応用したロボットが、ディズニーのショーにお目見えし、華麗な回転技を空中で披露してくれる日がくるのではないか、と期待してしまうのは当然と言えば当然なのではないだろうか。お役立ち、且つショーでも楽しい、正にロボットの理想形と言っても過言ではない。最後に、ディズニーリサーチ社は他にも面白いロボットやVR技術の開発で有名だ。いくつか紹介しておくので興味がおありの方はご覧になるのも一興だ。いつどこかの現場で、或いはショーの会場でこの技術にお目にかかる日が来たり来なかったりするかもしれない。
*Disney Research
https://www.disneyresearch.com/publication/stickman/</!–NoAds–>
*GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180523-stickman/
https://i.gzn.jp/img/2018/05/23/stickman/a08_m.jpg (図1)
https://i.gzn.jp/img/2018/05/23/stickman/a20_m.jpg (図3)
https://i.gzn.jp/img/2018/05/23/stickman/a29_m.jpg (図4)
https://pbs.twimg.com/profile_images/668011838580260865/npv10yrD_400x400.jpg (図2)
*GIZMODE
https://www.gizmodo.jp/2018/05/robot-stickman.html
執筆者:株式会社光響 緒方