医療関係者垂涎のアイテム、スタートレックの≪トリコーダー(レーザー照射により卒中と皮膚癌を診断可能)≫が遂に実現か 

SFや空想科学の世界には、シビアな現実社会を生き抜かなければならない我々人間が求めている「あったらいいな」が詰まっている。某猫型ロボット所有の、開けるだけで望む場所に行けるドアや、頭に乗せるだけで空を飛べる竹とんぼ。マッドサイエンティストと時間を行き来する映画に登場した、宙に浮くスケートボードに自動で乾くジャケット等。どれもこれも今現在無いのは仕方がないから、いつか、将来的には「あったらいいな」、という人間の願望の現れだ。願望、ということは叶えようとする人々もいる、ということで、実際に空想科学から現実科学になった物もある。今では巷に溢れかえる<ロボット>も、元々は1920年に当時のチェコ・スロバキア人の作家、カレル・チャペックの戯曲『ロッサム万能ロボット協会』で初めて登場した空想科学の一つだ。昔は空想だったものを、人間は着実に現実に引き寄せている。そして、遂に世界中の医療関係者のみならず、一般人でも誰でも一家に一台、一人に一台持っておきたい垂涎のアイテムが現実のものになろうとしている。

SF界の比類なき名作、1966年の放映開始以来、今もなお長きにわたってファンを魅了し続ける超大作『スタートレック』シリーズ。連作にありがちな初期設定を一新する、という暴挙に出ることなく一貫した世界観で描かれる、言わずと知れた大作だ。その『スタートレック』にも数多の空想科学アイテムが登場するわけだが、中でも現実にあればどれ程良いか、と思わざるを得ないのが≪トリコーダー≫(英語発音では≪トライコーダー≫,tricorder)だろう。

≪トリコーダー≫は簡単に言えば携帯型の探知装置だ。探知範囲は数百mから数km、機器の修理や不測の事態が起こった時の状況分析に使われているシーンが頻繁に登場する。この≪トリコーダー≫には上記の他にもう一つのタイプが作中で使われており、それが今回現実科学にお目見えしそうな注目アイテム、≪医療用トリコーダー≫だ。

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外見はこんな感じ。スタートレックを愛する人々には見慣れた機材だろう。この≪医療用トリコーダー≫は、神経伝達物質の定量を含めた神経活動や、生化学的分析を患者(患部)に近づけるだけで行えてしまう、驚異の優れものアイテムなのだ。これに近い機能を持った物を開発しているのが、イギリス・アストン大学だ。開発されているデバイスはレーザーを照射するだけで、卒中と皮膚癌を診断することが可能なのだという。採血不要で痛い思いをすることもなく、待ち時間も検査時間も長く心身ともに疲労困憊する諸々の検査の類をする必要もなく、ただレーザーを数分間当てるだけで診断は終了。その数分間の間に、心臓血管の状態、組織の代謝情報や血中の酸素濃度、バイオマーカーの範囲などを診断してくれるのだ。医療関係者にとっても患者にとっても正に理想の医療機器だ。

検査には3種類のレーザーを使用し、血液が細胞に効果的に送り込まれているかの変数を見るレーザードップラーフローメトリー、細胞・血中酸素測定のオキシメトリ―、癌診断で有用な細胞代謝評価のための組織蛍光を様々な技術で分析、診断してくれる。しかも、この装置は実験室の中だけでその効果が確認されているわけではなく、既に試験的にダンディー市の病院で使用され、皮膚癌と卒中の診断に有効だということが証明されているのだ。

更に言えば、現段階ではデスクトップタイプだが、ポータブルタイプも鋭意開発中とのこと。こちらはリストバンドタイプのものになる予定で、一層利便性が向上することになる。スキャンするだけで診断可能のアイテムはこれだけに留まらず、イスラエルでは服を着たままレーザースキャンして血圧や血糖値を測定できる装置が開発されているし、額に当てるだけで心拍数、体温、酸素飽和度、ヘモグロビン飽和度、呼吸数、血圧、心臓の電気的活動等が測定できる装置の開発も行われている。今は本家本元スタートレックの≪トリコーダー≫の多機能ぶりには及ばないが、そう遠くない未来に、空想科学の中の憧れでしかなかった≪トリコーダー≫を人類が手にする日が来るのではないだろうか。

参考
*TECKABLE
https://www.techable.jp/archives/78393

*Aston University
http://www.aston.ac.uk/news/releases/2018/june/doctors-could-use-new-star-trek-laser-device-for-health-checks/

*GIZMODO
https://www.gizmodo.jp/2013/06/post_12442.html

執筆者:株式会社光響  緒方