正にKing of Black。黒の中の黒、レーザー光を吸い込む。

『ベンタブラック』という色をご存知だろうか。正に黒の中の黒、King of Blackの座に相応しい真に真黒な黒だ。黒は黒だ、何がそんなに黒いのか、というと、「光の反射率0.035%」という驚異の吸収率を誇る黒色塗料なのだ。Surrey NanoSystems社が生み出したこの驚異の黒がどれだけ黒いかというと、

正面から見ると凹凸が全く分からない程黒い。あまりの黒さに美術館で展示していたベンタブラックアートの穴に人が落下して負傷者が出てしまったくらい、色なのか穴なのか分からないレベルで真黒なのだ。
更に、光の99.65%を吸収してしまうというその黒さを証明する動画がある。

お分かり頂けただろうか。決して上を通る時にレーザーポインターを消すというような卑怯極まりない真似をしているわけではない。照射されたレーザーの99.65%をベンタブラックの黒さが吸収してしまった結果がコレなのだ。普通の所謂「黒」との比較は下の画像が分かりやすい。

ベンタブラックはセ氏400℃の高温状況下で成長させた直径僅か2~3nmのカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)の集合体で出来ていて、鉄より10倍強く、熱伝導率が銅よりも7.5倍高い。アート作品兼落とし穴の他には、感度の向上の為に望遠鏡や地上や宇宙空間、大気中の機器に使われている他、その高い熱吸収率から太陽光発電にも使えるという。また、時計メーカーのH.モーザーが文字盤にベンタブラックを使用している。アートから日常生活、宇宙工学に至るアで幅広い使用が期待される真の黒というわけだ。

しかしこのベンタブラック、その黒さ以外にも話題に事欠かない。ベンタブラック使用の独占権を取得した芸術家と取得できなかった男性の仁義なきバトルもまた、この塗料を有名にした一つの要素かもしれない。最近では、取得できなかった方の男性が、ベンタブラック対抗する為の新たな真黒塗料「Black3.0」を発売して話題となっている。こちらも本家には及ばないが相当に黒い上に、使用の為の許可が必要なく世界中どこででも比較的安価で購入できる他、多くのメリットが挙げられており、なかなかの注目製品だ。黒に愛着のある方、ブラックホールと見紛うような黒い穴を作成してみたい方、凹凸を隠したい方は要チェックだ。

このベンタブラックは人が作りだした人工の産物だが、自然界にはずっとずっと昔からこれに匹敵する黒を持つものが存在する。それが、コレだ。

何かを貼りつけたように黒いこのカタカケフウチョウの光吸収率は95.5%。ベンタブラックに僅かに及ばないが紛うこと無き天然物だ。しかも、この黒さは鳥類のご多分に漏れずオスのみ。カラフルな部分との対比がより美しく見えるようにと進化したと言われている。つまり、メスへのアピールの為だけにこの黒さを手に入れたというのがなかなかに素晴らしい。ベンタブラックと共に、この天然物の黒さを持つカタカケフウチョウについて調べてみるのも面白いかもしれない。

*カラパイア
http://karapaia.com/archives/52264080.html
http://karapaia.com/archives/52252275.html
http://karapaia.com/archives/52168208.html
http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/2/b/2be5a8bb.jpg (Top画像)

*GIZMODO
https://www.gizmodo.jp/2016/03/blacker_than_black_material.html

*TABI LABO
https://tabi-labo.com/281224/vantablackcolor
https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/85227/8671d4be75ea07a2cf52f955cb0726e973f93566.png (図1)
https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/85228/70ea00feb1b6e30a9f5711f40b1a45e421f5c602.jpg (図2)

*NATIONAL GEOGRAPHIC
https://cdn-natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/042000180/ph_thumb.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=0690210bc0

執筆者:株式会社光響  緒方