【快挙】「はやぶさ2」が「リュウグウ」への着陸とサンプル採取に成功!! レーザー高度計も活躍!

小惑星探査機「はやぶさ」の快挙から9年。その後を継いだ「はやぶさ2」が再びの快挙を成し遂げてくれた。2014年12月3日に種子島宇宙センターから飛び立った2代目「はやぶさ」は、2018年に小惑星「リュウグウ」の20km上空に到達。2019年2月22日に、遂に「リュウグウ」への着陸に成功した。
地球からの距離なんと2億8000km。火星と地球の間に位置する直径1km程の小さな惑星に到着し、サンプル採取の為の着陸まで成功させたことは正に快挙だ。

宇宙を旅する、というのは信じ難い距離を旅するということだ。その長い長い旅路の距離を測りロケットや衛星の軌道/位置決定をする為に、宇宙開発ではマイクロ波を使ったレーダー技術が主流となっている。惑星探査機の場合は、地形調査や、軟着陸のために天体表面との距離の測定等を行う時に、大気による減衰が少なく、距離も速度も容易に算出できる為、非常に役立つ技術だ。
しかし、「はやぶさ2」のような小型探査機になると事情が違う。出来るだけ小さく軽く作られる小型探査機に大きなアンテナを搭載することは難しい。
アンテナなしの状態では指向性が保てず拡散してしまうので測定可能距離は数km程度になるのが通常だ。
こういった事情から、今回「はやぶさ2」が選択したのはレーザー高度計だ。指向性に優れていて、何よりもマイクロ波装置よりも軽量小型。しかも数百kmの長距離の計測も可能な優れものだ。レーザー高度計の能力は幅広く、天体との会合、地形測定や着陸といった航法/誘導の重要任務だけでなく、惑星の重力を測ったり、表面特性の分布を調べたりといった、科学観測機器としての役割で大いに活躍してくれる。

「リュウグウ」に向かう「はやぶさ2」が搭載しているレーザー高度計は、ライダー(LIDAR:LIght Detection And Ranging)だ。車の自動運転や自動掃除機等にも使われているあのLIDARだ。レーザーパルスを照射してその反射光の往復時間で距離を計測する。「はやぶさ2」に積み込まれたLIDARのレーザーパルスは10ナノ秒(1億分の1秒)だ。


図1:レーザー高度計の構造


図2:レーザー部写真

2018年7月、「はやぶさ2」に搭載されたLIDARが最初に「リュウグウ」との距離を計測してから1ヶ月の間に取得したデータを解析したものがコレだ。


図3

LIDARから照射したレーザーが反射した点で描き出された「リュウグウ」の姿だ。通常の探査機の姿勢はLIDARの照射が対象の赤道付近に向くように制御されているのだが、それを自転軸にそって動かす姿勢スキャンを行うことで、極地(地球で言う南極/北極の位置)部分の計測を行った。そのおかげで、「リュウグウ」の全貌を見ることが可能になった。とは言え、この時点での精度は数百m。全長が1kmに満たない「リュウグウ」の観測においてはとんでもない誤差だが、「はやぶさ2」が近づくにつれその軌道は修正され、着陸/観測の為のより正確なデータを取得できるようになった。この詳細なデータが、最良の着陸店を選ぶ為に大いに活用されたことは言うまでもない。
平坦な砂地に岩石が点在している、と予測されていた「リュウグウ」は実際には表面を岩石に覆われた凸凹の岩石惑星だった。つまり、長い道程を辿りついた「はやぶさ2」が安全に着陸する場所が非常に少ないのだ。研究者たちは昨年に行う予定だった着陸を延期し、安全に降りられる場所を徹底調査。3m程の狭い平地に無事着陸させることに成功した。地球と「はやぶさ2」の距離は約3億km。通信は片道20分、往復すれば40分だ。リアルタイムで指示を出せない中、約19時間かけての初タッチダウン、サンプル採取成功となった。


図4:「リュウグウ」の地表に映る「はやぶさ2」の影とサンプル採取の痕跡(撮影:はやぶさ2)

「リュウグウ」は初代「はやぶさ」が着陸した「イトカワ」とは異なり。水や有機物を含む小惑星だ。生命誕生の鍵となるアミノ酸は、大昔の地球に隕石や小惑星が衝突したことで運ばれてきたのではないか、という有力な仮説がある。もし「はやぶさ2」が採取してくれたサンプルにアミノ酸が、しかも生命を形づくる左手型のアミノ酸が含まれていれば、生命が宇宙からやってきたという証明になる。同様に、水の元となる水素や酸素が含まれていれば、水が宇宙からやってきた証明になるわけだ。「リュウグウ」は太陽系初期の状態を保った小惑星だと考えられておりその地質調査を行うことで、地球の生命誕生の謎が解けるかもしれない。

「はやぶさ2」の帰還は2020年の予定だ。それまでにあと2回のサンプル採取が計画されている。採取の成功と共に無事の帰還を祈りつつ、その活躍を見守っていきたいものだ。

蛇足だが、「リュウグウ」表面には既に名前が付けられている。『子供向けの物語に出てくる名前』をということで、大人にも子供にも馴染みの深い彼や彼女の名前が並んでいる。興味のある方は、下の画像やJAXAのホームページでご確認頂くと、「はやぶさ2」や「リュウグウ」への愛情が増してくるかもしれない。

図5:リュウグウの地名

参考
*国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://www.isas.ac.jp/j/forefront/2013/mizuno/
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180831d/
http://www.isas.ac.jp/j/forefront/2013/mizuno/image/fig_01.gif (図1)
http://www.isas.ac.jp/j/forefront/2013/mizuno/image/fig_02.jpg (図2:加工)
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190225_TD1_W1image/img/slide.jpg (図4)
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190121_Nomenclature/img/slide.jpg (図5)
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/photo/images/hayabusa2_01_large.jpg (Top画像)

*月惑星探査検討室(RISE)
http://www.miz.nao.ac.jp/rise/content/news/topic_20180802
http://www.miz.nao.ac.jp/rise/system/files/imagecache/fullpage/image_content/news/gallery_image/news935-3212.png (図