3Dプリントされたお菓子
航空機のエンジンを作り、生産が中止された戦闘機やクラシックカーの希少パーツを作り、生き物の精密な模型や医療用の臓器モデルも作りだし、金型不要で少数生産にも最適、という文明の産んだ利器と言えば3Dプリンターだ。応用範囲を日々着実に拡大しつつあるこの3Dプリンターだが、その範囲には飲食業界も含まれている。
3Dプリントパスタコンテストが開催され、3Dプリント料理のレストランがオープンするご時世に何を今更、と思われるかもしれないが、大きな物足りなさを感じている人も居る筈だ。そう、多くの3Dフードプリンターが成形してくれるのは「食材」であって「食事」ではないのだ。成形されたものを焼いたり煮たりする「調理」は人間がやらなければならない。勿論、調理をする、という行為は趣味であれ生活に必須な家事としてであれ大事なもので人によっては楽しいものであることは当然だ。しかし、家族の誰も彼もが忙しく、食器洗い乾燥も洗濯乾燥も、掃除機ですら全自動という時代に食事だって全自動になったって良いじゃないか、と思ってしまうのは仕方のないことだろう。
そんな多忙な現代人に朗報だ。調理不要、つまりプリントしたらすぐに食べられる3Dフードプリンターが開発されているのだ。
図1
開発に取り組んでいるのはコロンビア大学博士課程研究者ジョナサン・ブルティンガー氏。彼の装置に使用されるのは、小麦やジャガイモや米等の穀類、野菜、果物他色々な混合食品からできたペーストで、これは既に普及し始めている一般的な3Dフードプリンターと同じだ。注目すべきは、開発中のこのフードプリンターは、このペーストを押し出して好きな形にプリントされた食材を、そのままレーザー照射で加熱調理してくれるという正に全自動調理器とも言うべき優れものだというところだ。
*Impressive 3D food printer cooks food using LASER BEAM
完成すれば、出力後に調理の手間をかける必要は無い。鍋や油で汚れたフライパンを洗う面倒さからも解放される。猛烈に空腹な時にすぐに食べられる、とメリットだらけの夢の調理器具の誕生となること間違いない。
図2
フードプリンターの需要は高まりを見せている。3Dプリント専門のスイーツショップでは子供のデザインをそのままお菓子としてプリントできるサービスを行うなど人気は上々だ。また3Dプリントパスタコンテストではよりソースによくからむ新しいパスタの形や美しく見栄えのするパスタが開発され高い評価を受けている。
左)図3、右)図4:3Dプリントパスタコンテスト入賞パスタ
また、特定の栄養素に特化した食事を作りだすことができるので、健康状態や活動状況に合わせた栄養補給を簡単に行うことができる上に味もお好み次第でカスタマイズ可能だ。こういった面から、医療/介護業界での活用も期待されている。
図5:介護用3Dプリントフード
開発者であるジョナサン氏は、この3Dフードプリンターの技術を基に、誰もがデジタルレシピを共有し、あらゆる食事を完璧に再現するデジタルパーソナルシェフのようなフードプリンターの実現を目指しているという。
専門家によると、今後5~10年で3Dフードプリンターの本格的な商業化が進むだろうとのこと。全自動化された料理の究極は、スタートレックのフードレプリケーター、或いは青い猫型ロボットのグルメテーブル掛けあたりだろうか。近い将来、とは言わないが未来の世界で本当にボタン一つ押すだけとか、料理名前を言うだけで完璧な美味しい料理が出てくるシステムが完成するかもしれないと思うと非常に楽しみだ。
参考
*3dp.arts
https://idarts.co.jp/3dp/columbia-university-food-3d-fprinter-laser/</!–NoAds–>
https://idarts.co.jp/3dp/wp-content/uploads/2019/01/columbia-university-food-3d-fprinter-laser-1.jpg (図1)
https://idarts.co.jp/3dp/wp-content/uploads/2019/01/columbia-university-food-3d-fprinter-laser-2.jpg (図2)
https://idarts.co.jp/3dp/wp-content/uploads/2017/12/barilla-3d-printed-pasta-competition-winners-2.jpg (図3)
https://idarts.co.jp/3dp/wp-content/uploads/2017/12/barilla-3d-printed-pasta-competition-winners-1.jpg (図4)
https://idarts.co.jp/3dp/wp-content/uploads/2014/04/3DPrintedFood_1.jpg (図5)
https://makerslove.com/wp-content/uploads/2015/01/static1.squarespace.jpg (Top画像)
執筆者:株式会社光響 緒方