農作業はキツイ、辛い、腰が痛い。という時代は終わりを告げつつあるのかもしれない。他の多くの職業と同じように農業の世界にも自動化という波が着々とやってきているようだ。ドローンを使って最適な量の農薬を最適な場所に散布したり、モニターやセンサーを設置して圃場の環境を自動的に計測・記録しスマホからでも遠隔で確認出来たりと便利なシステムが次々に開発されている。そんな革新著しい農協技術の中で、今回ご紹介するのは「オート収穫機」だ。野菜も果実も穀類も時期が来たら収穫だ。一斉に実る作物を手作業で大量に収穫して回るのは大変な重労働だし、収穫期間の長いものなら毎日毎日休みなく同じ作業を繰り返さなくてはならない。しかも力仕事であることが大半だろう。それを軽減どころか機械が全部引き受けてくれるなら、労力が一気に軽減されること間違いなしだ。
今年3月、ニュージーランド最大の食品生産者のひとつであるT&Gグローバルが、米国のアバンダント・ロボティックスと協業して、ニュージーランド国内の果樹園でロボットによるリンゴの自動収穫が始まった。
この収穫期はLidar(レーザーによる画像検出と測距)によってリンゴの木々の間を移動しながら、マシン・ヴィジョンでリンゴの熟れ具合を判別する。そして、大きな筒状の真空装置を使って果実を吸い込んでき合う付けることなく収穫してくれるのだ。
果実の収穫は特定の時期に集中することが殆どだ。収穫の為にその時期だけ人を雇う果樹園は多いが、その季節限定の雇用に人が集まらず収穫しきれない果実が出てしまっていた。人に代わる労働力を得ることは必須で急務だ。その為に開発されたこの自動収穫ロボは、労働力の提供と共に廃棄される果実を減らし、生産能力の向上に貢献することを期待されている。とは言え、ロボットが収穫してくれるから人間の労働力は不要、とはならないとのこと。現段階ではこのロボットで果樹園のリンゴ全て採り尽くすことはできないので、人間が休息している夜間に、手の届かない箇所に生っている実を収穫して回ることがこのロボットの仕事になるようだ。
農業人口の減少が深刻な日本でも、収穫自動化の研究開発は進められている。2018年に開催された「施設園芸・植物工場展2018(GPEC)」では、キャベツ収穫の自動化について、路地野菜の自動収穫ロボットの研究を行っている立命館大学の深尾隆則教授が講演を行っている。
畑に植えられているキャベツは、一直線に並んでいるように見えるが実際はそうではない。人間が収穫するなら全く問題が無いこの僅かなズレが、ロボットが収穫する場合には大きな難関となってくる。ロボットはただ真っ直ぐに進んでキャベツを刈り取るのではなく、その位置を正確に把握して作業をしなければならないのだ。その為、紹介されたキャベツ自動収穫機は、¥ディープラーニングによってキャベツを検出し、収穫経路生成、追従制御、土壌面検出、収獲部の高さ制御などを行って自動収穫を可能にしているのだという。
更に、開発された自動収穫ロボットがあまりに高額化し、農業従事者が購入できないというような事態にならないように、ディープラーニング技術に加えて、Lidar技術や小型カメラ等を組み合わせ、コストダウンにも力を入れているとのことだ。現在のところ数百万円のコストを数十万円代にすることを目標としている。
他にも、ホウレンソウや春菊、小松菜といった軟弱野菜(収穫後、急速に劣化が始まる野菜の総称)の自動収穫についても農林水産省が後押しして研究が進められており、農業従事者の収益拡大、人手不足解消、経営の安定化や食料自給率の向上に役立つことを期待されている。
全ての収穫をロボットが行ってくれるようになるのはいつ頃になるのだろうか。今開発されているのは、一種類の作物に一つのロボットという具合だが、一つのロボットで全ての種類の果実や野菜を収穫できるようになる、という日がくるかもしれない。稲刈り機が当然のように普及しているのだから、そんなロボットがごく普通に畑や田んぼや果樹園で働いてくれているのが日常になる日も、いつか来るのではないだろうか。
参考
*ASCIIjp×ビジネス
https://ascii.jp/elem/000/001/837/1837342/
https://cdn.technologyreview.jp/wp-content/uploads/sites/2/2019/03/29032107/applepickingrobot_0-550×309.jpg (図1)
*AGRI JOURNAL
https://agrijournal.jp/renewableenergy/41274/!--NoAds-->
https://agrijournal.jp/wp-content/uploads/sites/10/2018/08/aj_sem20180823_003.jpg (図2)
https://image.kitchen-tips.jp/article/original/22921.jpg (Top画像)
執筆者:株式会社光響 緒方