(レーザー関連)電子液晶における電子の揺らぎを観測

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター電子状態スペクトロスコピー研究チームの下志万貴博研究員(東京大学大学院工学系研究科助教)、石坂香子チームリーダー(東京大学大学院工学系研究科教授)らの共同研究グループは、鉄系高温超伝導体で生ずる、電子集団がある一方向にそろおうとしている「電子液晶」状態(ネマティック液晶)において、電子が約1ピコ秒(1兆分の1秒)の周期で振動する現象(電子の揺らぎ)を観測しました。

本研究成果は、高温超伝導の発現機構だけでなく、電子の揺らぎが関与するさまざまな臨界現象の理解に貢献すると期待できます。

ディスプレイなどに用いられる一般的な液晶では、比較的自由に動くことができる棒状の分子が流動性を持ちながら特定の方向に配向します。一方、固体中の電子液晶では、電子が結晶格子と結びついているため、通常は自由に動くことができません。したがって、電子液晶のみの動きを取り出して本来の性質を調べ、電子液晶の流動性の本質を知るためには、フェムト秒レーザー(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)を照射し、結晶格子との結合を解く必要があります。

今回、共同研究グループは、鉄系高温超伝導体のセレン化鉄(FeSe)に対してフェムト秒レーザーを照射することで、ネマティック液晶状態を乱し、その回復過程を調べました。その結果、電子液晶が約1ピコ秒(1,000フェムト秒)の周期で震える現象を見いだしました。この揺らぎは、電子の波動関数の形状に関する情報を与える電子軌道の回転対称性の低下と連動しており、非平衡にある高温超伝導体の電子が示す新たな集団運動と考えることができます。

本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(4月29日付け:日本時間4月29日)に掲載されました。

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