【祝】国際海底探査レースで日本の「Team KUROSHIO」準優勝!深海4000mをレーザースキャンでマッピング!

2017年11月から2018年10月にかけて、私達が住むこの地球の神秘の解明の一旦を担う世紀の真剣勝負が行われていたことを覚えておられるだろうか。

【Shell Ocean Discovery XPRIZE】

そう、深海4000mの探査技術を競う、賞金8000万$をかけた一大イベントだ。日本からは海洋研究開発機構、東京大学生産研究所、九州大学、海上・港湾・航空技術研究所、日本海洋事業(株)、株式会社KDDI総合研究所、ヤマハ発動機(株)、三井E&S造船(株)という錚々たる大学・企業から30名以上の研究者や技術者達が集結した「Team KUROSHIO」が参戦し、この探査レースを堂々戦った。
2017年の技術提案書審査Round1をクリアし、2018年の決勝、Round2実海域競技に参戦したことまでは既に当「おもしろレーザーニュース」で以前に取り上げさせて頂いている。並居る欧州各国や米国の代表と鎬を削った勝負の結果が出るには数ヶ月の時間がかかるとのことだったが、漸く、全ての結果が出揃い、結末をお伝えできることになった。

日本代表「「Team KUROSHIO」は準優勝!!堂々2位という結果をおさめた!

5月31日モナコで行われた主催のXプライズ財団の発表によると、1位は米国チーム(14ヶ国のメンバーが参加する国際チーム・支援は日本財団)、それに続く2位に「Team KUROSHIO」が入賞した。
【Shell Ocean Discovery XPRIZE】のRound2の課題は、水深4000mの海底から精密な画像を送信して複雑な海底地図を生成できる自立型水中探査機を開発することだ。しかも、海岸から計測地点への移動も海底地形データの収集もその送信も、全て無人で行われなければならないという非常にハードなものだ。

「Team KUROSHIO」はこの国際海底探査レース参戦にあたり、3機のロボットを開発した。その内の1機、自律型海中ロボットで全長は3m、重さ370kg。水中での減衰が少ない緑色レーザーを照射して海底の地形データを取得する精密探査システムを備え、フラッシュを使って深海の暗闇を撮影するカメラを併用して、精密な海底探査に挑んだ。本番前に行われたテストでは、海底から7~8mを航行しながら作成された3Dデータは、蟹の姿ですら判別可能だったほどの精度を誇り、その性能はRound2でも遺憾無く発揮されたようだ。他に、海中地図の自動作成を行う無人潜水艇等2機が海底での探査を担った。更に、この3期を探査海域まで連れて行き、また連れて帰ってくる謂わば母艦の役割をする無人洋上中継器の計4つがこの海底探査レースで活躍したロボット達だ。彼らの取得したデータを陸上にある有人の拠点とは電波で、海中では音波で通信を行い、探査は全て無人、つまりロボットのみで行われた正に最先端技術を競うレースだったわけだ。

「Team KUROSHIO」は実地試験エリア大半のマッピングに成功し、様々なタイプの自立型無人潜水機(AUV)を使用できる柔軟なソフトウェアプラットフォームを開発したことが高い評価を受けた。優勝した14カ国の海洋学者による合同アメリカチーム「GEBCO-日本財団」は、参加チームの中で唯一、実地試験の課題を全てクリアするという偉業を成し遂げている。

地球の海と陸の割合は多少の変動はあるが71:29。海が7割・陸が3割。そしてその7割を占める海の少なく見積もって80%のことを、私たち人間は殆ど知らない。深海に限って言えば9割以上を知らないと言っても過言ではないだろう。しかし、海底は知らないままで放っては置けないほどの魅力に満ちている。それは子供の持つ興味のように「どんな未知の生物がいるのか」「どんな世界が広がっているのか」という好奇心に満ちたものだけでなく、石油やメタンハイドレードのような海底資源、世界の通信網を支える海底ケーブル敷設、或いは地殻変動の研究のため等、暗闇と水圧の世界である深海のデータを求める理由は溢れんばかりだ。
3年に及ぶ【Shell Ocean Discovery XPRIZE】開始当初、課題の困難さから完遂できるチームは無いのではないかとさえ言われたこの海底探査レースは、12チームが実用可能な海底マッピング技術の開発に成功し、その内の1チームは全てを完璧にやり遂げることに成功した。海底探査の可能性を大きく広げた今回のレースで開発された技術は、今後様々な場面で活用されていくことだろう。

参考
* Team KUROSHIO
https://team-kuroshio.jp/
https://pbs.twimg.com/media/D8JnT4-UwAA71eL?format=jpg&name=900×900 (Top画像)
https://team-kuroshio.jp/technology/images/tec_image03.jpg (図1)

* NATIONAL GEOGRAPHIC
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/060400329/?P=2

* livedoor’ NEWS
http://news.livedoor.com/article/detail/12883487/
http://image.news.livedoor.com/newsimage/6/9/6967c_873_3a1a036ef3d4812093ca3df92aa86d7f.jpg (図2)

* 産経新聞
https://www.sankei.com/life/news/190605/lif1906050025-n1.html

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執筆者:株式会社光響  緒方