NASAが超高精度な月面データを無料配布!レーザー高度計LOLAと高性能カメラLROCの10年分のデータを結集。「CGI Moon Kit」

中秋の名月に因んで先月は国土地理院が公開している月面地図についてお伝えさせて頂いたわけだが、月が美しいのはお月見の時だけではない。空の澄み渡る秋の名月も、冬の冷たく冴えた空気の中で見上げる月も夜桜の上に輝く月も、蒸し暑い夏の夜空に涼しげに光る月も、皆同様に美しいものだ。というわけで、お月見も季節も関係なく再び月の話題をお届けしたい。前回は日本のJAXAと国土地理院の合作だったが、今回はアメリカ・航空宇宙局(NASA)が月を愛する人々に嬉しい贈り物をしてくれている。

NASAが行なっているのは、高精度の月のCGIの無料配布だ。アーティスト向けに3Dレンダリングソフトウェアでの使用目的で設計されたこのCGI「CGI Moon Kit」は、流石にNASAだけあって超高精度。そんじょそこらの画像とは違い、深度データまで含まれている。このデータを使えば、精密且つ詳細な月の3Dマップが簡単に作れてしまうという垂涎のデータだ。アメリカは2004年に新宇宙政策を発表し、その中で2020年に再び月の有人探査を実施するとしている。その政策のもと2009年に打ち上げられたのが「Lunar Reconnaissance Orbiter」(LRO)月周回無人衛星だ。月の上空50kmを周回するこの衛星は、最高で50cmという極め付けに高い解像度を備えたカメラ(LROC)を搭載しており、有人探査の為の着陸ポイント選定の為の情報収集を担っている。LROCが一度に撮影できる範囲は勿論限られているが、蓄積された画像は10年分だ。複数の写真を合成し重ね合わせることで月の「可視領域」1つの画像データとすることに成功している。継続の賜物とも言うべき高精度画像データだが、一つ弱点をあげるとすれば「可視領域」のみのCGIだと言うことだ。撮影できない月の影の部分はデータには含まれていないのでご注意を。

24ビットRGBのTIFFファイルかJPEGでダウンロードでき、最大2万7360×1万3680ピクセル・494.1MBがダウンロード可能。

更に、LROに搭載されているのは画像データを収集するカメラだけではなく、月面の深度データを計測するためのレーザー高度計(LOLA)も勿論装備している。月面に向かって照射したレーザーが反射して戻ってくるまでの時間を計測して起伏の激しい月面の詳細を把握すると共に、月の表面を覆っている物質が硬い岩石なのか柔らかい堆積物なのかを分析することができるそうだ。そんな高性能レーザー高度計が集めに集めたデータを活用した、月のディスプレイスメントマップも無料配布されている。

手に入れた精密な月のデータで何をするかは人それぞれ。擬似月面旅行をするもよし、仮想宇宙戦争の月局地戦を展開するもよし、或いは月移住計画を個人的に推進してみるもの良いだろう。月兎やかぐや姫を住まわせたり、精密極まりない月を再現して一人お月見を一年中こっそり楽しんでみる、等々、思う存分月を楽しめる良い機会だ。因みにこの「CGI Moon Kit」はアート向けに配布されているものなので、科学的な興味でデータを利用したいという方は別のソースデータを使うのがオススメとのこと。

最後に、2020年の月有人探査を目指しているアメリカの新宇宙政策だが、その先には更に火星の有人探査の検討にも着手すると発表している。実現が非常に楽しみだが、その前に「CGI Moon Kit」のような「CGI Mars Kit」が配布されるかもしれないと考えると、それもまた非常に楽しみだ。

参考
・GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20191007-nasa-cgi-moon-kit/
https://i.gzn.jp/img/2019/10/07/nasa-cgi-moon-kit/s01_m.jpg (図1)

・engadget
https://japanese.engadget.com/2019/10/07/nasa-3d-cgi-moon-kit/

・NASA Scientific Visualization Studio
https://svs.gsfc.nasa.gov/4720
https://svs.gsfc.nasa.gov/vis/a000000/a004700/a004720/moon_mapping_360p30.mp4(動画)

https://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/201906/201906160185_top_img_A.jpg?1560676861(Top画像)

執筆者:株式会社光響  緒方