(レーザー関連)レーザーを使用した芸術作品 in 六甲ミーツ・アート芸術散歩2021

 毎年秋になれば、六甲山を舞台にさまざまなアート作品を鑑賞できる「六甲ミーツ・アート芸術散歩」。2021年出展アーティスト、河原雪花さんの作品に株式会社光響のレーザー技術が使用された。本記事では河原さんの作品と弊社のレーザー技術がどのように掛け合わされ作品が生まれたのか、そして使用されたレーザー機械について紹介する。

映画に呼応した3つのレーザー作品

河原さんの作品は切り絵を用いたアニメーション映画。物語はヨーロッパのおとぎ話のような世界観を基調に、現代社会への言及、個々の孤独や苦しみにもフォーカスの当たったダークな側面が含まれる。繊細かつ美しい水彩画で構成される画面内を切り絵でアニメーションされた登場人物が動く。この映画作品を主題に六甲サイレンスリゾートのギャラリー空間はさまざまな作品で飾られた。そのうちレーザーが使用された作品3点を続けて紹介する。

アクリル板の額縁

1つ目はアクリル板にUVレーザーマーカーを使用してマーキングした【額縁】だ。こちらはどのように作られたのだろうか。


まずはイラストレーターでパスデータを作成する。額縁の縁の模様を分割し、繰り返し照射することを想定している。全5種類のデザインが作成された。

 UVレーザーマーカーを起動させ、専用ソフトに読み込んでアクリル板に照射する。アクリル板は薄い煙を出しながら、白く、少し盛り上がった複雑な表情でマーキングされていった。

マーキングを終えたら、背景画や切り絵を挟みこんで額縁は完成。A4、A3サイズ
共に6点ずつ、合わせて12点の額縁が制作された。

今回使用したのは光響オリジナル製品のUVレーザーマーカー。使用方法が簡単ながらもこの機械が奥深いのは、照射する際のパラメーター(スピードやパワーなど)を非常に細かく設定することで、それに伴う仕上がりを実に多様に実現できる点だ。この特徴により、物質にとって最適なマーキングを行うことができる。かつ金属や樹脂、陶器、紙、布など様々な物質に照射することも可能だ。

【商品詳細】https://www.symphotony.com/products/marker/uvmkkit/

【動画】アクリル板でオリジナル額縁を作ってみた

星や月の装飾

2つ目に紹介するのは、真鍮・ステンレス板を切断し作成された【星や月の装飾】。これらはパネルで作られた《夜の広場》の一部として飾られたが、使用したのは【ファイバーレーザー切断機】である。

まず用意するのは再びイラストレータで作成したパスデータ。(CADでの作成も可能だ)ファイバーレーザー切断機を起動させ、パラメーターを入力したら切断できる。

 一枚の板をレーザーが正確にすばやく切り抜いていく様は圧巻!真鍮、ステンレス共にバリが少なく切断面がきれいなことが特徴だが、特に真鍮は優れており、火花の散りもわずかだった。星の虹彩も驚くほど正確に均一に切り出されている。


なんと月(moon)は300個以上のクレーターの穴あけ切断をしたが、文字通り光の速さであっという間に切断された。

ステンレスと真鍮の2種類、【星や月の装飾】がこうして完成した。

使用したのは光響製ファイバーレーザー切断機。俊敏さと正確さを誇り、繊細なパスも0.01mmの精度で切り出すことができる。加えてリニアモーター採用で加速性能と等速安定性に優れており、切り出されたエッジは非常にシャープなので、ほとんどの場合後処理の必要ない。また加工サイズを600 mm × 600 mmと小サイズ対応としたことで、大変コンパクトな切断機となっている。

【製品詳細】
https://www.symphotony.com/flhc1500/

【動画】
真鍮で装飾パーツを作ってみた

ステンレスで装飾パーツを作ってみた

ガラスブロックに3Dデータをインナーマーキング

最後に紹介するのは内部にレーザー彫刻を施されたガラスブロックとそれに使用された【レーザーインナーマーカー】。ガラス内部には映画に登場する人物や星の形をした3Dオブジェが彫刻されている。

用意するのは3Dデータ。こちらは3DCGソフトblenderを使用して作成された。

用意した3Dデータを専用ソフトに読み込んで点データに変換し、サイズを調整する。続けてインナーマーカーを起動し、ガラスをセットしたら準備は完了。

 人物データは合計3回照射した。2回目以降では、レーザー光が1回目の照射点にあたり、屈折して独特の質感が生まれる。

ガラスの透明感がとてもきれいな作品となった。

使用したのはこちらの製品、【レーザーインナーマーカー】。対象物を傷つけることなく内部に2D、3Dマーキング、彫刻することができる。コンパクトなサイズであり、簡単インストール、高速彫刻が特徴だ。対象物の内部でレーザーを衝突させて微細な傷(クラック)をつけて彫刻を施していく。レーザーの焦点を3Dデータに合わせて移動させ、クラックにより内部に絵を描いていくことで、外には傷の無い3D彫刻を行う。

【製品詳細】
https://www.symphotony.com/products/marker/inner/

【動画】
ガラスに3Dデータをマーキング

さいごに
多様な用途に合わせて開発されてきたレーザー製品の多くは産業、医療、研究等のために使用されるが、今回のようにアーティストとコラボレーションし、芸術の分野で能力を発揮したことは、レーザー製品のいまだ眠る新たな可能性を予感させた。芸術は技術と一緒に発展するといっても過言ではない。技術が発展し、新しいものが生まれるたびに、アーティストがそれを使って自由に創作する。このような構図はこれからもずっと続いていくだろうし、その一旦を担うことは、弊社の掲げる「レーザー技術で社会を豊かに」という経営理念にも通底する。レーザー技術と芸術の共演は、これからますます目の離せない分野となるだろう。