本学は、連続落下させた燃料にレーザーが照射された位置を3次元で計測し、レーザー核融合の実験装置を最適化することで、燃料にレーザーが照射される確率を約3.5倍に高めることに成功しました。本実験装置は、世界各国で研究が進められている大規模なレーザー核融合炉のミニチュア版であり、燃料にレーザーが照射される確率を高め核融合反応が起こる確率を向上させた本研究成果により、小規模なレーザー核融合の実用化に向けて前進しました。本研究成果は、レーザー核融合技術に関する著名な学術学会誌「Fusion Science and
Technology(フュージョン・サイエンス・アンド・テクノロジー)」の電子版に10月4日(木)付けで掲載される予定です。なお、本研究は、光産業創成大学院大学、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社、浜松ホトニクス株式会社 中央研究所、トヨタ自動車株式会社 先端材料技術部、名古屋大学未来社会創造機構、米国パデュー大学、大阪大学レーザー科学研究所、国立研究開発法人 産業技術総合研究所、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所の9研究機関20名の研究者で行いました。
<研究成果の概要>
核融合は太陽エネルギーの源です。レーザー核融合とは、海水中に豊富に存在する重水素を入れた燃料にレーザーを照射することで核融合反応を起こし、放出される中性子などを利用して人工的にクリーンなエネルギーを作り出そうとする技術です。世界の主要なレーザー核融合施設ではランプを励起用光源とする大型のレーザー装置を用いて、入力エネルギーに対し出力エネルギーを100倍程度に大きくする高利得達成に向けた大規模な実証実験を行っているため、1日数回のレーザー照射に限られています。一方、本学は、レーザー核融合の実用化には連続してエネルギーを取り出す必要があると考え、小型で高繰り返しが可能な半導体レーザーを励起用光源に用いて連続的に核融合反応を起こすことができる小規模なレーザー核融合の研究を進めてきました。本研究では、重水素化ポリスチレンを材料とする直径1mmのプラスチックの球を核融合燃料として用いました。燃料が装填されたターゲットローダーから回転円盤に空けられた20個の穴に燃料を1個ずつ導入し、円盤が回転することでその下の固定された円盤に空けられた射出孔から毎秒1個ずつ燃料を落下させます。燃料が落下する速度をフォトダイオードで検知し、レーザーの照射位置に燃料が到達するタイミングでレーザーを照射することで燃料の一部を加熱し核融合反応を起こします。本学は、2012年に実験装置を開発し、燃料にレーザーが照射された位置情報を1台の位置検出カメラで取得することで、燃料がレーザー照射位置の中心に落下するよう装置を調整しレーザー核融合の実験を進めてきました。しかし、燃料にレーザーが照射される確率
は20%程度と低く、さらに確率を高める必要がありました。今回、2 台の位置検出カメラで平面に加え奥行き方向の位置情報を取得することにより、燃料にレーザーが照射された位置を3次元で計測しました。計測結果を基に、回転円盤の揺れを抑制するなど、レーザーの照射位置の中心に燃料が落下するよう装置を最適化したことに加え、燃料の製造方法を工夫し形状の均一性を高めたことで燃料が落下する位置のばらつきを抑制しました。この結果、燃料にレーザーが照射される確率を70%程度まで向上させることに成功しました。
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