レーザーポインターに戯れるのは犬や猫だけではないのです

投稿者:

仔猫や仔犬、或いはペンギンといった動物が、壁や床を動き回るレーザーポインターの小さな光点を追いかける動画、というのはインターネット上に数多くアップされている。彼らにとってあの小さな光の点は、魅力的な遊び相手か狩猟本能を掻き立てられる恰好の獲物に見えているらしい。その動画を見て、心癒されている人もその再生回数と同じくらいの人数は存在するわけだが、そこで、である。

20140623171037

レーザーポインターを追いかけるのが、犬、猫、ペンギンだけではないことをご存知だろうか?

虎?ライオン?うさぎ?そんなものでは珍しくもなんともないし、そう驚きもない。では、哺乳類ではないとしたら?更に、陸上生物ですらないとしたら?
小さくない驚きを覚えるのではないだろうか。

正解は、「魚」である。
知能が高いと言われ遊び心も多少あるだろうイルカやシャチなら、水族館などで訓練した、と言われれば納得できるかもしれないが、レーザーポインターの光点を集団で追い掛け回すのは所謂、普通のお魚なのだ。信じられない方は下の動画をご覧頂きたい。

確かに追いかけている。群れをなして小さな光を追いかけている様は、遊んでいるように見えなくもない。

しかし考えて見れば、魚が光を追いかけるというのは、そんなにおかしなことではないのかもしれない。イカ漁の様子等を思い浮かべてみれば分かりやすいが、伝統的に夜間の漁に灯りを使うというのは珍しい光景ではないからだ。
勿論、すべての魚が光に集まって追い掛け回してくれるわけではなく、例えばクロダイの様に陸から釣る時は煙草の火でも逃げてしまう、と言われるほど嫌う魚もいる。
魚が光に集まる理由は諸説あるようだが、餌となるプランクトンは光に集まる習性があるので、プランクトンを食べる小魚がそこに集まり、更にその小魚を食べる大型の魚が集まるという食物連鎖の形で光に群がる、というのが有力なようだ。
光に集まる主な魚は、先ず、アジ、イワシ、サバなどの比較的小型の種類。なんとも美味しそうな夕食的なメンバーである。次に、前述した漁火でも有名なイカ(分類的には軟体動物だが取り敢えず)、同じく軟体動物のタコ。彼らは小魚目当てに集まって来る。タコはエビや貝類を捕食しているイメージが強いが、魚も餌にしている。タチウオも同じく光に集まる魚でイカなどを捕食する。余談だが、イカとタチウオは光と暗闇の間を狙うと良く釣れるそうだ。他にはカマス、シーバス等が主なところである。
犬や猫のように光で遊んでいるわけでは無いというのは少々残念だが、このレーザーポインターを追う習性を利用する試みも考えられている。人間活動の影響を受けやすく減少傾向にあるサクラマスを、光点を用いて魚道へ誘導し、農業水道への迷い込みを防止したり、有害外来種に指定されているブルーギルの駆除の為に行動制御し捕獲する等、の方法が考案されている。尤も、この方法がすべての魚に適用できるわけではなく、この2種が視覚的捕食者であるという点がこの場合は重要なのである。

他の陸上生物のそれと同じように魚がレーザーポインターを追いかける様子も可愛く面白いものだが、直接見てみたいからといって無闇に実行に移すのは考え物である。光を苦手とする魚もいるからだ。
最後に光に纏わる魚の怖い話を1つ。
「ダツ」という魚がいる。小魚の鱗で反射した光に敏感に反応し、突進する性質があるのだが、暗夜にこの魚が生息する海域をライトで照らすと、その光目がけて飛び出してくることがある。その速度、およそ時速70km(!!)。もはや凶器のレベルだ。実際、ダツが目に突き刺さってしまった事例や、ナイトダイビング中に腹部を切り裂かれた事例が存在する。他にも父親と夜釣りをしていた子供のヘッドライト目がけて突進してきたダツが目に突き刺さり、脳にまで達したことで死亡した、というハワイでの事例もある。沖縄では「ダツはサメより怖い」と恐れられる程なのだ。更に恐ろしいことに回転しながら突き刺さって来るので、無理に引き抜くと大量出血に繋がる為、もし刺さってしまっても慌てて処置をしないようにして欲しい。
日本でも、北海道南西部以南、南西諸島、小笠原諸島等に生息している。充分に遭遇機会はあるわけだが、さて、夜の海を照らしてみたい方はおられるだろうか?
ちなみに、ダツはサンマやサヨリ、トビウオの仲間で、特に美味ではないが食べられるとのこと。身は脂肪の少ない白身で刺身、から揚げ、塩焼等がおすすめである。ただし骨が青く不気味なのでさばいている間に食欲が失せるという人もいるので、そういう意味でも注意が必要な魚である。

100_7560-e1429020738395 図1
*「ダツ」画像

参考
*光刺激を用いた魚類の行動制御に関する研究
*レポ部
*暇つぶしニュース
*http://asukiku.jp/wp-content/uploads/2015/04/100_7560-e1429020738395.jpg(図1)

「執筆者:株式会社光響 緒方」