米軍所有のヘリコプターといえば、映画「ブラックホークダウン」のタイトルになった、UH-60ブラックホーク(由来はネイティブ・アメリカン、ソーク族の族長)、1990年、こちらも映画「アパッチ」のタイトルになったAH64アパッチ(こちらも由来はネイティブ・アメリカンのアパッチ族から)が有名だ。対戦車ミサイルやロケット弾の搭載が可能で、強力なレーダーのバックアップを受けた火器管制装置やGPSを備え、作戦遂行に重要な役割を果たしている。
2017年4月、アメリカ・ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験施設で、攻撃ヘリコプター・アパッチにレーザー兵器を搭載するテストが行われ、成功したことが発表された。
図1
*レーザー兵器を搭載したAH64アパッチ。
図2
*レーザー兵器。小型のタンク型で小型軽量化が成功していることが分かる。米軍・Raytheon社の共同開発。
今回の実験でのターゲットは小型の戦車。「静止したターゲット」を上空を飛行するアパッチがレーザーエネルギーを集中させることが可能か、ということだ。対象を正確に補足する為に電気光学式赤外線センサーからなる「Multi-Spectral Targeting System」を使って、ターゲット情報や周辺状況の認識、レーザービーム制御を実現したとのこと。それに加え、様々な風速、高度、旋回等、飛行状況に応じて実験は行われた。開発したRaytheon社によると、結果はアパッチの攻撃力を証明するのに十分な物が得られたという。
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現在、攻撃ヘリに搭載されている火器で最も多く使用されているのは、空対地ミサイル「ヘルファイア」だろう。主に対戦車用に用いられており、セミアクティブレーザー誘導により、飛翔時間が早く着弾までの所要時間が短い為、回避や反撃の隙を与えず攻撃が可能な火器だ。ISILとの戦闘の激化により需要は拡大している。ISIL戦闘員が車両内に居る、若しくは散開している場合に非常に効果的であり、尚且つ、周辺に非戦闘員が居た場合はそちらを傷つけずに攻撃できる可能性が最も高い兵器でもある。それでも、意図せずに被害を出すことは避けられない。
レーザー兵器はその点の改善にも大いに役立つと考えられている。
例えば、敵のライフラインの一つである発電所は破壊したいが建物や周囲の人間に被害を出したく無い状況や、或いは、人間の盾として非戦闘員が囚われている為、爆撃等が行えない状況であっても、レーザー兵器であればピンポイントでの攻撃が可能となる。また、少人数のグループや個人を標的にすることも可能だという。レーザー兵器の導入は、結果として非戦闘員の犠牲者や、ライフラインや文化財の損傷の減少にも役立つことも期待されている。
攻撃ヘリに搭載出来るミサイルには、重量・サイズに制限があり、またターゲットに接近しすぎれば対空誘導弾で撃墜される可能性もある。しかし、高高度からの爆撃では命中精度が下がり誤爆の確立が上昇する。その為、攻撃ヘリへのレーザー兵器の搭載は非常に有効な手段とされている。
そして、今回の実験で使用されたレーザー兵器は、軽量・小型化に成功しており、このサイズであれば他の機体への転用が容易であると共に、実戦投入の日は想像以上に早い可能性もあり、これから開発競争が激化する軍事分野としての注目も集めている。
参考
*Gigazine
http://gigazine.net/news/20170627-laser-helicopter/
*http://i.gzn.jp/(図1−5)
*THE DRIVE(THE WARZONE)
http://www.thedrive.com/the-war-zone/11840/laser-apache-has-successfully-fried-targets-on-white-sands-missile-range
*三十六時通信
https://blogs.yahoo.co.jp/higashiosaka36h/57124246.html
「執筆者:株式会社光響 緒方」