【地球発、太陽系外行】レーザー推進ロケット初の搭乗員は、極小の最強生命力生物。

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宇宙は半径465億光年の球状をしている、と考えられている。と言ってもこれは地球に住んでいる我々地球人が観測出来る範囲の宇宙であって、実はもっともっと広いのかもしれないし、ひょっとしたら、そのちょっと先で途切れて別の良く分からない何かになっているのかもしれないが、今のところどうなっているのかは不明だ。465億光年先の宇宙も気になるが、そんな遥か彼方の銀河系を気にする前に、先ず気にしなければならないことは山ほどある。何しろ人間は自分たちが住んでいる地球にくっついている衛星「月」のことも、すぐ隣にある金星や火星のことも碌に知らないし、太陽の次に近い恒星のことだって全く知らないも同然なのだ。先ずは手が届きそうなご近所さんから良く知る仲になっていくべきだろう。

と言うわけで、地球から最も近い恒星「アルファ・ケンタウリ」への訪問計画だ。近いと言っても宇宙基準の話なので彼の恒星までの距離は4.37光年。身近な単位に直すと41.3兆km程になる。正直途方もない。実はこの恒星「アルファ・ケンタウリ」には太陽の側に地球があるように、生命体の存在する惑星が周回している可能性があるとされているのだ。つまり宇宙基準のご近所さんには、隣人が居住しているかもしれないのだ。この「アルファケンタウリ」になんと生物を送り込もうという計画が進められている。ただ観測の為に向かうのではないところが画期的だ。計画の名前は『スターライト計画』。生物を送り込む、と言ってもその星は4.37光年も先にある。光速の宇宙船をもってしても4年強かかるのだ。しかも地球人は未だ光速に至る宇宙船の開発には成功していないし、既存の技術では光速には遠く及ばないのが悲しい現実だ。

ではどうするのか。
そこで新技術だ。大出力のレーザーを使って超高速で太陽系の外に宇宙船を飛ばすという方法を使う。以前ご紹介した事のある「ブレイクスルー・スターショット計画」では、宇宙船に取りつけた帆に地上からレーザーを照射して推力を得るということだったが、今回のスターライト計画ではどのようにレーザーを使うのかは今のところ詳しくは分かっていない。が、その速度は光速の約20%に達すると見られ、アルファ・ケンタウリまで20年前後で到着できる可能性があるのだ。既存の技術で出せる速度を考えると大幅なスピードアップだ。そして気になる宇宙船は、スマホサイズの物になるだという。

…この時点で人類は、太陽系外への旅の候補からは外れている。残念なことだが、いきなり人間が行くには危険すぎる上に遠すぎる。仮に往復できると考えても、40年は辛いものがあるだろう。それに加え、この過酷な度に耐えるには人間の肉体はあまりに弱すぎる。この宇宙船の乗組員(?)には、厳しい環境に耐えられる頑強な体と底知れない生命力を持つ生物が選ばれなければならないのだ。

そして多くの地球上の生物の中から選び抜かれたのは、

『クマムシ』だ。知る人ぞ知る、というか昨今急激に知名度を上げた感のある生物にあるまじき耐久性を備えたムシだ。因みに名前にムシとつくが昆虫ではなく、緩歩動物と言う分類になる。足は4対8本、体長は1.7mm程の小さな生き物だ。

その脅威の生命力の一端を書き連ねると、
・耐久可能温度は150℃~-200℃前後
・75000気圧がかかっても生存
・体の85%が水分であるにも拘らず、それが0.5%まで減っても生存可能
・強い放射線に晒されても全く平気

同じ地球上の生物とは思われないこの頑健だ。
とは言え、通常の活動状態では普通の生物と変わらず、こんな環境に置かれたら即死なのだが、クマムシは環境が急激に変化すると乾眠状態という体内の水分を極度に減らした状態になり、代謝を停止させることで環境の回復を待つ機能を持っている。この乾眠状態になることで、過酷な環境を乗り越えることが出来るのだ。元の活動状態に戻すには、水を一滴たらしてやるだけで良い。それだけで普通に動き始める、というのも驚きだ。

更にこのクマムシ、寿命は1ヶ月から3ケ月程度なのだが、120年前から保管されていた乾燥した苔に水をかけたら、一緒に乾燥していたクマムシが動き出した、という記録もある程長生きになるのだ。これならば、宇宙の旅にも耐えられるに違いない。というか、既にクマムシは宇宙空間での耐久性を証明しているのだ。2007年に欧州宇宙機関の宇宙実験衛星「Foton-M3」が乾眠状態のクマムシを、紫外線を防ぐ特殊なケースに入れて、宇宙空間に晒す実験を行った。その期間10日間。クマムシは見事に生還を果たし、通常の活動に戻ったのだ。

この実績と耐久力/生命力を考えると、『スターライト計画』の乗組員としてはこれ以上の生物はいない。正しく適任だろう。クマムシならば、宇宙空間をレーザー推進による超高速で旅するという過酷な状況にも耐え抜いてくれるに違いない。そしてもう一種、搭乗が決定している生物、線虫『C・エレガンス』も他に類を見ない強者だ。

2003年、スペースシャトル「コロンビア」が空中分解した悲惨な事故が起こったが、その後の調査で、実験用に積み込まれていたC・エレガンスだけは生き残っていたことが判明したのだ。信じがたい生命力だ。また、この線虫は癌患者の尿の匂いを好む、という変わった性質があり、C・エレガンスを使った癌診断の実用化が進められているという、医学の面でも非常に人間に協力的な生物だ。

地球から太陽系を離れその外へ出て行ったのは、今のところかの有名なボイジャー1号のみだ。この『スターライト計画』が実行され成功した暁には、クマムシとC・エレガンスは、太陽系外に飛び立った初めての地球産の生物ということになる。いつか人間が同じように宇宙へ旅立つ日が来ることを夢見つつ、『スターライト計画』今後に注目して行きたい。

参考
*Newsweek
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/post-9098.php
*Leave a Nest
https://lne.st/2012/08/17/spacetardigrada/
*NATIONAL GEOGRAPHIC
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/120100053/
http://しぐさでわかる動物の本音.net/wp-content/uploads/2017/01/kuma.jpg
(図1)
https://i1.wp.com/blog.eyewire.org/wp-content/uploads/2014/08/datworm.jpg?w=500 (図2)
https://i.gzn.jp/img/2016/05/16/limits-of-humanity/00.jpg (Top画像)

執筆者:株式会社光響  緒方