作業時間を大幅短縮。3Dレーザースキャナーによる橋梁検測システム。

建造物を建てる、というのは物理的にも大変だが実際に建造する以外にも、諸々手間も労力も時間も取られる作業は数多い。それは建築中だけではなく、完成した後にも存在する。建造物ができあがった後、その完成した建造物が図面/設計図通りに仕上がっているかを計測し、確認する作業を「出来形検測作業」という。これはメジャーなどの計測道具を使って人力で行われるもので、計測状況を写真に収めて「出来形検測調書」を作成しなくてはならない。この写真撮影に関しても細かな決まりが設定されており、実寸法が分かるようにあて木等を使用することや、全景・計測時の目盛り、計測数値が判読できるように撮影する等が定められている。更に、合否判定検測では発注側の立会いも必須となる為、人手も労力も割かれる作業となっている。

最近では、3Dレーザースキャナー他ICTを導入して作業の簡略化をはかる動きも出てきてはいるが、計測時間は短縮されてもデータ処理に時間を要することや、専門技術者の確保に難点がることが指摘されてきた。三井住友建設は橋梁の建設データを一元管理・運用する「SMC-Bridge」の拡充と、3Dレーザースキャナーによる橋梁の出来形検測システムを開発した。このシステムは、3Dレーザースキャナーで計測した点群データから橋梁の断面形状データを自動的に抽出して、指定箇所の寸法を自動検測してくれる。抽出したデータはCADデータとしての抽出が可能で、精度は人力で計測する従来の方法と同レベルを維持することが可能だ。

データをクラウドで管理することにより、発注者との情報共有も可能で、出来形検測調書に出力することも出来る為、調書作成時間の大幅な短縮にもなる。試験運用では、従来の作業工程と比較して施工管理者が同作業に拘束される時間を半分以下に短縮できることが証明され、建設現場における生産性の向上に大いに貢献できるとみられている。

三井住友建設は、このシステムを建設中の橋梁データを蓄積し完成後の維持管理やコスト削減に生かすと共に、橋梁以外の建築物や、図面が残されていない建築物の計測等にも活用していく方針だという。

参考
*BUILT Building×IT
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1808/15/news015.html

執筆者:株式会社光響  緒方