映画に呼応した3つのレーザー作品
河原さんの作品は切り絵を用いたアニメーション映画。物語はヨーロッパのおとぎ話のような世界観を基調に、現代社会への言及、個々の孤独や苦しみにもフォーカスの当たったダークな側面が含まれる。繊細かつ美しい水彩画で構成される画面内を切り絵でアニメーションされた登場人物が動く。この映画作品を主題に六甲サイレンスリゾートのギャラリー空間はさまざまな作品で飾られた。そのうちレーザーが使用された作品3点を続けて紹介する。
アクリル板の額縁
1つ目はアクリル板にUVレーザーマーカーを使用してマーキングした【額縁】だ。こちらはどのように作られたのだろうか。
まずはイラストレーターでパスデータを作成する。額縁の縁の模様を分割し、繰り返し照射することを想定している。全5種類のデザインが作成された。
マーキングを終えたら、背景画や切り絵を挟みこんで額縁は完成。A4、A3サイズ
共に6点ずつ、合わせて12点の額縁が制作された。
今回使用したのは光響オリジナル製品のUVレーザーマーカー。使用方法が簡単ながらもこの機械が奥深いのは、照射する際のパラメーター(スピードやパワーなど)を非常に細かく設定することで、それに伴う仕上がりを実に多様に実現できる点だ。この特徴により、物質にとって最適なマーキングを行うことができる。かつ金属や樹脂、陶器、紙、布など様々な物質に照射することも可能だ。
【商品詳細】https://www.symphotony.com/products/marker/uvmkkit/
星や月の装飾
2つ目に紹介するのは、真鍮・ステンレス板を切断し作成された【星や月の装飾】。これらはパネルで作られた《夜の広場》の一部として飾られたが、使用したのは【ファイバーレーザー切断機】である。
まず用意するのは再びイラストレータで作成したパスデータ。(CADでの作成も可能だ)ファイバーレーザー切断機を起動させ、パラメーターを入力したら切断できる。
なんと月(moon)は300個以上のクレーターの穴あけ切断をしたが、文字通り光の速さであっという間に切断された。
ステンレスと真鍮の2種類、【星や月の装飾】がこうして完成した。
使用したのは光響製ファイバーレーザー切断機。俊敏さと正確さを誇り、繊細なパスも0.01mmの精度で切り出すことができる。加えてリニアモーター採用で加速性能と等速安定性に優れており、切り出されたエッジは非常にシャープなので、ほとんどの場合後処理の必要ない。また加工サイズを600 mm × 600 mmと小サイズ対応としたことで、大変コンパクトな切断機となっている。
【製品詳細】
https://www.symphotony.com/flhc1500/
【動画】
真鍮で装飾パーツを作ってみた
ガラスブロックに3Dデータをインナーマーキング
最後に紹介するのは内部にレーザー彫刻を施されたガラスブロックとそれに使用された【レーザーインナーマーカー】。ガラス内部には映画に登場する人物や星の形をした3Dオブジェが彫刻されている。
用意するのは3Dデータ。こちらは3DCGソフトblenderを使用して作成された。
用意した3Dデータを専用ソフトに読み込んで点データに変換し、サイズを調整する。続けてインナーマーカーを起動し、ガラスをセットしたら準備は完了。
ガラスの透明感がとてもきれいな作品となった。
使用したのはこちらの製品、【レーザーインナーマーカー】。対象物を傷つけることなく内部に2D、3Dマーキング、彫刻することができる。コンパクトなサイズであり、簡単インストール、高速彫刻が特徴だ。対象物の内部でレーザーを衝突させて微細な傷(クラック)をつけて彫刻を施していく。レーザーの焦点を3Dデータに合わせて移動させ、クラックにより内部に絵を描いていくことで、外には傷の無い3D彫刻を行う。
【製品詳細】
https://www.symphotony.com/products/marker/inner/
【動画】
「ガラスに3Dデータをマーキング」
さいごに
多様な用途に合わせて開発されてきたレーザー製品の多くは産業、医療、研究等のために使用されるが、今回のようにアーティストとコラボレーションし、芸術の分野で能力を発揮したことは、レーザー製品のいまだ眠る新たな可能性を予感させた。芸術は技術と一緒に発展するといっても過言ではない。技術が発展し、新しいものが生まれるたびに、アーティストがそれを使って自由に創作する。このような構図はこれからもずっと続いていくだろうし、その一旦を担うことは、弊社の掲げる「レーザー技術で社会を豊かに」という経営理念にも通底する。レーザー技術と芸術の共演は、これからますます目の離せない分野となるだろう。