(レーザー関連)量子科学技術研究開発機構(QST)他/レーザーによる炭素イオン加速で1ギガ電子ボルト1)に到達

がん治療装置の小型化や宇宙における極限状態の再現につながる成果


ポイント

  • 国内最大の極短パルス・超高強度レーザーJ-KAREN-P2)を利用して実現された成果。
  • J-KAREN-Pの高度化により、従来比150 %の高強度レーザー照射を実現。
  • ナノメートル(nm =10-9メートル)精度で厚みを制御したレーザー照射ターゲットを作成し、高強度レーザー照射したことで達成。
  • 重粒子線がん治療装置の小型化や観測が難しい宇宙の極限状態の再現実験につながる成果。

概要

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 小安重夫、以下「QST」)関西光量子科学研究所(以下「関西研」)の福田祐仁上席研究員、大阪大学大学院工学研究科の蔵満康浩教授、神戸大学の金崎真聡准教授らの研究チームは、国内最大の極短パルス・超高強度レーザーである、QST関西研のJ-KAREN-Pを活用することで、レーザーを用いた炭素イオン加速として1ギガ(G=109)電子ボルトの大台に到達した。
 QST関西研では、重粒子線がん治療装置の小型化などを見据え、レーザー光の像転送システム3)の開発・導入などJ-KAREN-Pの高度化を進め(図1)、レーザー光を従来比の150 %の高い強度で照射することが可能となった。さらに、本研究チームで確立した、シート状物質グラフェン4)を積層した上に、厚みをナノメートル精度で制御した金を蒸着する技術を確立してJ-KAREN-Pに最適なターゲットを作成した(図2)。これらの相乗効果により、高効率の炭素イオン加速を実現した。1ギガ電子ボルトは、極短パルスレーザーによる炭素イオン加速において世界最高エネルギー5)に相当する。本成果は、炭素イオンを用いる重粒子線がん治療に必要なエネルギー(約5 ギガ電子ボルト)に向けた大きな進歩として重粒子線がん治療装置の大幅な小型化につながるだけでなく、得られた高エネルギー炭素イオンを含むプラズマは、直接観測が難しい宇宙におけるプラズマ状態6)などを実験的に再現できる可能性がある。
 本成果は9月17日の日本物理学会第80回年次大会において、「J-KAREN upgradeを用いた最高エネルギーのカーボンイオン加速」のタイトルで口頭発表される。


図1.J-KAREN-Pのビーム伝送部に像転送システムを導入しことで、
従来比150%の高強度化を実現。

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