京都ぶらりスキャンの旅、第2弾は烏丸通をチョイス。前回記事では横断しただけの烏丸通を今度は直進して、備にスキャンしていくわけだ。
京都駅から今出川通りまでをぶらり歩きで地元京都を記録する、と言いたいところだが、距離は3km弱。ここは自転車を使ってサイクリングをしつつ爽やかにマッピングしていくことにする。
地図の中央、ピンクのラインが烏丸通。烏丸の由来は「川原洲際」。つまり「河原の砂州に面した土地」。平安時代には既に烏丸の当て字が使われていた記録が残っている古くからの地名だ。当時は「からすまる」と呼ばれていたが、次第に現在の「からすま」に変化していったとされている。因みに、公家の烏丸家は「からすまる」と読む。但し、室町時代に限ってはこちらも「からすま」と読まれていたようだ。こちらの事情は足利義正、烏丸資任、三魔、のキーワードでお調べ頂くと分かりやすい。烏丸通は、北は北大路バスターミナル北側・今宮通りから、途中を京都駅で分断され、南は久世橋通りまで。では、間に居座る京都駅を起点に、サイクリングマッピングのスタートだ。
先ずは京都駅を出てすぐのところに鎮座まします東本願寺を左に見ながら快調な始まりだ。
真宗大谷派本山東本願寺(正式名称「真宗本廟」)、と言えば京都観光では外せない有名所だろう。堀川大路の西本願寺(本願寺派)と並べて、京都人からは「お東さん」と親しまれている。登録有形文化財である御影堂や阿弥陀堂他、その外観は誰もがどこかで一度は目にしたことがあるのではないだろうか。実はこの東本願寺、江戸時代には何と4回も火災に見舞われたせいで、火元となったのは1回だけにもかかわらず、「火出し本願寺」などという非常にありがたくない名前で庶民から呼ばれたりもしたこともある。
京都市内は碁盤の目状になっているので、一つの通りを辿るには只管直進するだけで良い。徒歩ではなく自転車でのマッピングだが、バックパック型ライダーを背負っている、ということを忘れそうなくらい違和感が無い。感覚的には普通のリュックを背負っているのと同じだ。時速20kmまで対応できるので、自転車ならば気持ちよく風を感じながら飛ばしても問題なくマッピングが可能だ。正に、サイクリングついでに楽しめる。更に直進して御池通を横断。
御池通の名前は神泉苑から来ている。神泉苑は平安京大内裏の南に接していた禁苑で、南北約500メートル、東西約240メートル、池を中心とした大規模な庭園だった。この池に通じる道、ということで御池通、と称されたと言われている。現在の二条城築城の際に大幅に規模を縮小されてしまっているが、神泉苑は祇園祭の元となる御霊会が行われた場所であり、記録に残る最初のお花見もここで行われた。また、一説によると源義経と静御前の出会いの場所だったとも言われ、ロマン溢れる庭園だ。気温は28℃とやや高めだが、湿度は低くサイクリング兼マッピングには最適の日和だ。センサーを取り付けた棒がバックパックから突き出しているが、特にバランスが悪いとうことも邪魔になることもなく、快適なサイクリングタイムを過ごせる。
爽やかに漕ぎ進み烏丸丸太町へ。
材木問屋が立ち並んでいたから丸太町。そのまんまだ。奇妙な由来の多い京都の地名の中では何という安定感。古くは丸田町と書くこともあったようだ。幹線道路の一つではあるが、朝夕に地獄の交通渋滞を引き起こし、日々京都人を悩ませる場所の一つでもある。右側に広大な敷地の京都御苑を見ながら少し進むと下立売通だ。
「何て読むのかわからない地名」ランクで中堅所に入りそうなこの地名は「しもだちうり」と読む。店舗を構えず立って商いをする人々が多く集まったことからこの名前になったそうだ。下があるので当然この先に「上立売」もあるし、ついでに「中立売」もあるのでお忘れなく。読み方は「かみだちうり」「なかだちうり」だ。そしてこの先に、歴史の教科書で誰もが一度は目にする場所がある。『蛤御門』、そう蛤御門の変(禁門の変)の起こった場所だ。
現・京都御苑の外郭九門の一つで正式名称は「新在家御門(しんざいけごもん)」という。普段は閉ざされたまま開かれることのない門が、御所の火災の時にだけ開いたことから火で炙られた蛤が開く様子に準えて付けられた通称が「蛤御門」だ。1864年、長州藩が会津藩排除の為に挙兵し、京都市中で市街戦を繰り広げた際、最大の激戦区となったのがこの蛤御門周辺だった。その時に撃ち込まれた弾痕が今も門に残されている。この後、政敵となった長州藩は薩摩と薩長同盟を結び、江戸幕府終焉と明治時代の幕開けに向かって進んでいく、言うなれば歴史の転換点となった場所だ。サイクリング&マッピングの終着点はもうすぐ。外郭九門の乾門を通り過ぎれば見えるのは同志社大学だ。
1875年に設立された同志社英学校が基礎となったキリスト教系大学。西日本の私立大学で初めての大学令に基づく旧制大学となった。この先が今出川通りで、今回のサイクリング&マッピングはここで終了だ。
これが今回マッピングした烏丸通の全体図。右側の青い部分が京都駅付近、左側の赤い部分が同志社大学付近だ。高低差は25m。緩やかな上り坂になっていることが確認できた。普段は意識しない地形の詳細が分かるというのも、レーザーマッピングの醍醐味の一つかもしれない。少し長めの距離を自転車で、と前回とは趣向を変えてのマッピングだったが、全く問題はなかった。バックパック型ライダーの重量も5kgと軽量なので、背負って自転車を漕いでいても気にならない。広範囲をスピーディーにマッピングしたいなら、断然、徒歩よりも自転車だろう。マッピング精度も徒歩とほぼ変わりなく、しかも楽に行うことが出来る上、サイクリング気分で楽しめる。
バックパック型ライダーを背負って京都を歩こう!【京都駅~今出川編】はここまで。京都制覇を目指して、次回をお待ち頂けると幸いだ。
執筆者:株式会社光響 緒方