(レーザー関連)津波を記録していたムール貝 〜貝がらの元素分析から明らかになった津波による沿岸環境の変化〜

発表のポイント
◆東日本大震災から半年後に岩手県大槌町で採取したムール貝(ムラサキイガイ)の貝がらを分析したところ、津波による沿岸への土砂流入や海底堆積物の巻き上がりが、貝がらのマンガン濃度の変化として記録されていたことがわかった。
◆これまでの観測手法では不可能であった、大災害前から直後にかけての沿岸環境変化の様子を貝がらの化学組成から解明することに成功した。
◆本手法を応用することで、巨大災害や人為的な汚染が発生したときに、発生後から過去にさかのぼって環境変化を明らかにできる可能性がある。

発表者
杉原奈央子 (東京大学大気海洋研究所 学術支援職員)
白井厚太朗 (東京大学大気海洋研究所 准教授)
堀 真子 (研究当時:東京大学大気海洋研究所 特任研究員)
天野 洋典 (研究当時:東京大学大気海洋研究所 大学院生)
福田 秀樹 (東京大学大気海洋研究所 准教授)
小畑 元 (東京大学大気海洋研究所 教授)
田中 潔 (東京大学大気海洋研究所 准教授)
水川 薫子 (東京農工大学 助教)
佐野 有司 (東京大学大気海洋研究所 教授)
高田 秀重 (東京農工大学 教授)
小川 浩史 (東京大学大気海洋研究所 教授)

発表概要
東日本大震災による津波発生時、海の中の環境はどのように変化したのか。津波の最中や直後の様子はこれまでの海洋観測によって調べることができなかった。東京大学大気海洋研究所の杉原奈央子学術支援職員らのグループは、二枚貝の貝がらを利用した環境復元の時間解像度を劇的に向上させることでこの問題の解明を試みた。貝がらの化学組成は周囲の環境を反映しており、貝がら断面には樹木年輪のような成長線が形成されているため分析した貝がらの位置がいつ作られたかがわかる。研究グループが、震災から半年後に岩手県大槌町から採取したムール貝(ムラサキイガイ)を調べた結果、貝がらのマンガン濃度が津波直後に急上昇していることを明らかにした。この変化は、津波による陸上の土砂流入や海底堆積物の巻上がりによって海水の化学組成が変化したことを示している。津波直後は調査研究を行える状況では無かったが、津波を生き延びた二枚貝の貝がらは当時の様子を克明に記録していた。この手法は、大型台風や人為的な環境汚染など、モニタリングデータが無い場合でも過去にさかのぼって環境を調べられる手法になると期待できる。

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