【今回の発表のポイント】
- ミリグラム程度の振動子(振り子)のエネルギー散逸を大きく低減することに成功
- これにより、従来の限界より5桁も重い巨視的振動子の量子制御が可能に。量子制御された重力源としての利用に道を拓く
- 重力センサーと組み合わせることで、重力の量子性検証への応用が期待
- ダークマターや重力デコヒーレンスの検証にも応用可能
【概要】
原子をはじめとする極微の世界の量子と呼ばれるものは、量子揺らぎと呼ばれる不可避の揺らぎを伴います。近年、薄膜やカンチレバーといった巨視的な物体でさえ、それらの量子揺らぎを観測・制御することが可能となってきました。今回、東北大学 学際科学フロンティア研究所/電気通信研究所の松本伸之 助教(兼 JSTさきがけ研究者)と電気通信研究所のカタニョセスベンジャミンロペス博士課程大学院生、枝松圭一教授らは、石英の超細長線(直径10-6メートル、長さ5センチメートル)をミリグラム程度の鏡にレーザー溶接することで、エネルギー散逸が世界で最も小さな振動子(振り子)を開発することに成功しました。エネルギー散逸は振動子と外部環境がどの程度分離されているかを示す指標です。低散逸化により、従来の量子制御実験の対象より5桁も重い、ミリグラム程度の超巨視的振動子の量子制御が実現可能になりました。重い物体の量子制御を実現すれば、量子状態にある物体から生じる重力を観測することで、重力の量子的な性質の検証につながると期待されます。本研究は東北大学 学際科学フロンティア研究所が主体となり、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ「大質量機械振動子を用いた巨視的量子力学分野の開拓(研究者:松本伸之)」の支援を受けて実施されました。本研究成果は、2020年6月5日(日本時間)に物理学分野のトップジャーナルである『Physical Review Letters』に掲載されました。
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